命を左右する脳外傷
皆さん、こんにちは。
今回は急性硬膜下血腫に関する雑学をご紹介します。
突然の頭部外傷から命を脅かすこともある急性硬膜下血腫。
脳と硬膜の間に血液が急速にたまり、脳を圧迫してしまうこの状態は、一刻を争う医療対応が必要です。
交通事故や転倒、スポーツ中の衝撃など日常の中にも発症のきっかけは潜んでおり、症状の進行も早いため、早期発見と迅速な治療が生死を分けるカギとなります。
🧠 急性硬膜下血腫とは?
急性硬膜下血腫(きゅうせいこうまくかけっしゅ)は、頭部外傷によって脳を包む「硬膜」と脳の間に急速に血液が溜まる状態を指します。
外傷後、数時間以内に症状が進行することが多く、迅速な診断と治療が患者の命を救うカギになります。
🔎 急性硬膜下血腫発症のメカニズム
脳は「硬膜」「くも膜」「軟膜」という膜に包まれています。
硬膜下血腫は、硬膜とくも膜の間に出血が起きる病態です。
原因となるのは、主に架橋静脈と呼ばれる血管の損傷です。
これらは脳表と硬膜を繋ぎ、衝撃による急激な頭部の加速・減速運動で引きちぎられやすい特徴があります。
- 急性型:外傷から72時間以内に症状が出る
- 亜急性型:3〜14日以内
- 慢性型:2週間以降(高齢者に多い)
急性型は出血速度が早く、脳圧の急上昇によって短時間で意識障害や命の危険を招きます。
🩺 急性硬膜下血腫の主な原因
急性硬膜下血腫は主に以下のような要因で発症します。
- 交通事故(自動車、バイク、自転車)
- 高所からの転落
- 接触スポーツ(アメリカンフットボール、ラグビーなど)
- 高齢者の転倒(特に抗血栓薬内服中)
- 暴行や打撃による頭部損傷
高齢者では脳の萎縮により架橋静脈が引き伸ばされ、少しの衝撃でも損傷しやすくなっています。
🥼 急性硬膜下血腫の症状の進行パターン
急性硬膜下血腫は症状の進み方が早く、特に以下が重要な警告サインです。
- 頭部打撲後の強い頭痛
- 一時的に回復したように見えてから急変(ルシッドインターバル)
- 意識レベルの低下
- 片側の手足の麻痺や痺れ
- 嘔吐
- 瞳孔の左右差(片方が開きっぱなしになる)
ルシッドインターバルは外傷後に一時的に意識が戻るため、周囲が安心して対応が遅れる危険があります。
🩻 急性硬膜下血腫の診断方法
急性硬膜下血腫は、頭部CTスキャンで即座に診断可能です。
画像上では、脳表に沿った三日月形の高吸収域として描出されます。
MRIでも確認できますが、救急現場では迅速性からCTが第一選択です。
💉 急性硬膜下血腫の治療方法
症状の進行が速いため、診断後すぐに治療方針が決まります。
- 外科的治療
👨⚕️ 開頭血腫除去術:頭蓋骨を開け、血腫を除去して脳の圧迫を解除
👨⚕️ 穿頭ドレナージ術:頭蓋骨に穴を開けて血腫を排出(軽症例・慢性型に多い)
- 保存的治療
軽症で血腫が小さい場合は集中治療室で経過観察
🩼 急性硬膜下血腫の予後と後遺症
急性型は致死率が高く(文献によっては50%以上)、救命できても麻痺や言語障害、記憶障害などの後遺症が残る可能性があります。
そのため、発見と手術のタイミングが予後を大きく左右します。
完全な予防は困難ですが、次のような生活習慣がリスクを減らします。
- 自転車やバイク乗車時は必ずヘルメット
- スポーツでは適切な防具を着用
- 高齢者宅では段差や滑りやすい床を改善
- 頭を強く打ったら症状がなくても受診
おわりに
急性硬膜下血腫は、外傷後わずかな時間で命を奪う可能性がある重篤な脳の病気です。
頭を強く打ったら、「大丈夫そう」でも油断せず、救急外来でのCT検査を受けることが重要です。
早期の対応が生死と後遺症の有無を大きく分けます。
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以上となります。お読み頂きありがとうございました。
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